接触皮膚炎の仕組み
接触性皮膚炎は、刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎の2種類に分類され、それぞれ発症する仕組みが異なります。
まず刺激性接触皮膚炎ですが、原因物質の刺激によって誰にでも皮膚炎が生じうる可能性があります。アレルギー性接触皮膚炎の場合、皮膚の中に化学物質が侵入することで免疫機能が作用し、アレルゲンとみなされ抗体が作られます(感作)。アレルギー反応が起こった後、皮膚に炎症が生じて症状が現れます。アレルゲンが体内に侵入すると、丘疹(皮膚が小さく盛り上がった状態)、水ぶくれ(水疱)、紅斑(血管が拡張した状態)といった症状がかゆみとともに現れます。
接触皮膚炎の原因物質
接触皮膚炎は、様々なものが原因となり発症します。
食べ物
果物や野菜などの食べ物、日用品、植物などで症状が現れた場合、症状は短期間で消失する傾向にありますが、症状が長期に及ぶ場合、原因になる物質を特定するのは困難です。
金属
金属は、日常的に身に付けるアクセサリーや時計など、原因を容易に特定できるものもありますが、メイク用品(アイメイクなど)やスカーフなどの染料にも含まれている場合もあります。金属が原因となると、汗に反応してかぶれることがよくあるため、夏に症状が現れる傾向にあります。
化粧品
メイク用品が原因となる場合、メイク用品を使った部位にだけ炎症が起こります。しかし、メイクによって隠れてしまい、炎症に気づかずに色素沈着となってしまうこともあります。
医薬品
医薬品や医療用品が原因となり、かぶれるケースもあります。病気を治す目的で使用するものですが、誤って医療用品やお薬などを異物と捉えてしまうことで、かぶれてしまう方もいます。
接触皮膚炎の症状
皮膚の炎症を引き起こすアレルゲンや刺激物に接触することで、ヒリヒリしたかゆみや痛みとともに発疹(皮膚が少し盛り上がる状態)や発赤が現れます。さらに症状が進んだ場合、水疱やブツブツした湿疹が現れ、肌荒れを起こし、ガサガサになったり皮むけが起こったりすることがあります。皮膚に厚みがある部位(手の平など)だと、それほど症状は現れませんが、原因物質が付着したままの状態で皮膚の薄い部位を触ることで、そこにも症状が現れてしまう可能性があります。
刺激性接触皮膚炎の場合
刺激性接触皮膚炎は、ヒリヒリした痛みが強く出る場合が多いです。
症状が軽い場合、小さい水疱や発赤の出現、角質が剥がれるくらいで治まりますが、症状が重いと、火傷を負ったような大きい水疱が強い痛みを伴いながら現れるケースがあります。
アレルギー性接触皮膚炎の場合
アレルギー性接触皮膚炎では、原因となる物質に接触した部位に紅斑が現れ、かゆみを感じます。症状が進むにつれ、炎症が拡大していき、触れた部分の周囲にも影響が現れるケースがあります。アレルギー性であれば、炎症が起こるのは接触した直後ではなく、数時間~1日経って現れることが多いです。
刺激性とアレルギー性のどちらも、状態が悪くなると、炎症が落ち着いても色素沈着が
起こる場合があります。このような事態を避けるには、炎症が軽いうちに皮膚科を受診し、治療を開始することが必要になります。
治療・予防方法
治療法
刺激性、アレルギー性のいずれの場合も、ステロイド外用薬を使用した炎症とかゆみを抑えていく治療になります。強い症状が広範囲に現れている場合、治療中でもご自宅で冷やしたガーゼを患部に当てる処置を行ってください。
軽症の方は、外用薬を医師の指示に従って使用して頂くと、数日で完治することが多いです。なお、症状が酷くなる、もしくは良くなる気配がない方は、早めに担当医にご相談ください。
予防法
原因物質への接触を控える
最も効果的なのは、原因物質への接触を控えることです。原因物質を突き止める必要がありますが、特定が困難な場合、以前に触れてかぶれた物質への接触を控えてください。どうしても触らなければいけない時は、手袋の着用や露出が少ない服装など、十分に対策をしましょう。
肌を清潔な状態に維持する
長時間、原因物質が肌に付いていると、炎症が悪化する恐れがあります。
対策として、汗をかいたら入念に拭き取るようにしましょう。なお、擦りすぎると皮膚が傷つくため、優しく押さえながら拭いてください。また、お風呂やシャワーも肌を清潔に維持するのに効果的な方法です。お風呂から上がった後やシャワーを浴びた後は、保湿ケアを徹底しましょう。
掻かないように心がける
患部を掻いてしまうと、角層に傷がつき状態が悪くなる恐れがあります。さらに、小さな傷口から細菌が侵入して、化膿を引き起こす可能性もあります。患部を冷やすなど工夫し、掻かないように心がけることが大切です。
肌に合うものを使う
日用品は肌に合うものを使用しましょう。特に気をつけたいのは衣服です。なかでも肌着などの素材に注意する必要があります。また、肌に触れることが多い洗剤やメイク用品などの成分にも注意を払わなければいけません。自分の肌に合わないもの、過去にかぶれたものなどは使わないようにしましょう。
金属アレルギーで起こる皮膚炎
金属アレルギーといえば、アクセサリーや時計が原因となるイメージが強いと思いますが、実は以外なところにも金属は使用されています
例えば、衣服の染料やメイク用品といった皮膚に触れるものにも金属は使用されています。また、歯科治療で詰め物や義歯などに使用される金属、金属が含まれる食品の過剰摂取、生体内挿入金属(骨折などの治療で使う金属製のボルトや人工関節)などから金属イオンが発生して、汗と混ざることで体の外に排出され、それが皮膚に触れて金属アレルギーによる症状が全身に現れることもあります。
そのため、近年では、金属を使用した治療を実施する場合、まず全身型金属アレルギーの検査が行われることが増えています。全身型金属アレルギーの症状は、創傷被覆材や皮膚表面接着剤が原因の接触皮膚炎と同様の症状が起こるケースがあるため注意しなければいけません。